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復興需要の先にこそ、東北の伸びしろがある。建設DXのBRANUが仙台に拠点を構えた理由|みちのくリーダーズ(東北進出編)#02 潮田友喜

「みちのくリーダーズ(東北進出編)」は、仙台・東北に進出してきた企業の経営者に話を聞く新シリーズです。第2回のゲストは、建設業界に特化したDXを手がけるBRANU株式会社(ブラニュー)。建設DX「CAREECON Platform(キャリコンプラットフォーム)」を軸に全国の中小建設事業者を支援し、2025年12月には東証グロース市場に上場した成長企業です。同社は2025年9月、東北エリアの拠点として仙台支店を開設しました。

お話を伺うなかで見えてきたのは、「復興需要の先にこそ、東北の伸びしろがある」という見立てでした。まだ取り組んでいる企業が少ないからこそ、動けば一歩抜きん出られる。東北6県と北海道を飛び回り、建設の現場に深く入っているからこそ見える景色は、地元で事業を営む経営者にとって、前を向くためのヒントになるはずです。

BRANU株式会社 仙台支店 潮田友喜支店長と岩渕晃大サブマネージャー
岩渕晃大サブマネージャー、潮田友喜支店長と筆者

BRANU(ブラニュー)とは。建設業に特化した「建設DX」

BRANU株式会社 仙台支店長 潮田友喜|建設DX・CAREECON Platform

潮田 友喜 (うしおだ ともき)

BRANU株式会社 仙台支店長

栃木県栃木市育ち。東京本社の営業として福島・宮城エリアを担当したのち、2025年9月開設の仙台支店の立ち上げを担う。建設DX「CAREECON Platform」の導入・伴走支援を通じ、東北6県・北海道の建設事業者の集客・採用・生産性向上を支える。現在は仙台在住。

田口陽大

田口 陽大 (たぐち ようた)

株式会社ミチノクキカク 代表取締役 / インタビュアー

東北大学経済学部卒。総フォロワー27万人・月間1,000万ViewのSNSメディアを運営。YouTube番組「みちのくリーダーズ」「みちのくエコノミクス」プロデューサー。

※本記事はインタビューの内容をもとに、田口陽大が編集・再構成したものです。取材には仙台支店 サブマネージャーの岩渕晃大(いわぶち こうだい)さんにも同席いただきました。

全国50万社、東北4.4万社の建設市場へ

BRANUが掲げるのは「建設DX」です。建設業向けプラットフォーム「CAREECON Platform」を提供し、その導入と運用サポートを通じて、建設業のデジタル化を進めています。特徴的なのは、対象を建設中小企業に完全に特化していること。オウンドメディア(サイトやSNS、ブログ)の制作・運用から求人の掲載、企業のマッチング、業務効率化や経営管理まで、建設会社の経営課題に必要なものをひとつなぎで支えます。

建設業は、国全体で約50万社。うち48万社が中小・零細企業で、東北6県だけでも約4.4万社があるといいます。BRANUの顧客の中心は、社員10名以下が5割、資本金1,000万円以下が8割、年商は平均7〜8千万円ほど。「お父さんが社長、お母さんが経理、息子さんが専務」という、まさに町の工務店です。これまで支援の手が届きにくかった層にこそ、大きな市場がある——それが同社の見立てです。

なぜ東北に拠点を構えたのか

BRANU 建設DX 仙台支店 潮田友喜支店長インタビュー
仙台支店にて。東北進出の背景を語る潮田さん

復興需要のあと、「次どうするか」に手が打てていない

東北の建設市場は、関東・関西・九州と比べればコンパクトです。それでも潮田さんが東北に可能性を見たのには、明確な理由があります。震災後の復興需要が一巡し、「では次どうするか」に手を打てていない会社が非常に多いというのです。仕事を待っていれば流れてきた時代から、自ら動いて仕事をつくる時代へ。その転換点にある今こそ、提供できる価値が大きいと考えました。

もともとBRANUは東京から仙台や福島の顧客を訪問しており、東北にも一定の取引がありました。そのサポートを強めつつ、新たな開拓もできる。「必要としてもらえる」という確かな手応えがあったからこそ、2025年9月、仙台支店の開設に踏み切ったといいます。

東北6県プラス北海道を、ひとつの管轄に

仙台支店が受け持つのは、東北6県に北海道を加えたエリアです。面積で言えば、国内最大級の管轄になります。オフィスは40人弱が入る規模を確保し、現在は営業メンバーが中心。また、カスタマーサポートはオンラインで東京・大阪から対応し、拡大に応じて仙台にも置いていく計画です。いわきへ車を走らせ、大船渡の顧客のもとへは盛岡に泊まり込んで通い、北海道へは2〜3週間の期日を決めて一気に回る——足で稼ぐ、機動力の高い体制で北のエリアをカバーしています。

BRANUの建設DXが向き合う、東北の課題

「やっている」と「できている」は違う

Webマーケティングについて、潮田さんは鋭い指摘をします。自社のオウンドメディア(サイトやSNS、ブログ)を持っている会社は、東北にも多い。けれど、「やっている」と「できている」はまったく別だというのです。集客や採用という目的に対して本当に使えている会社はごくわずかで、8〜9割は「あるだけ」の状態。だからこそBRANUは、地域を問わず、まずサイトを作り直すところから一緒に始めるといいます。

採用の二極化 ― ブランディングできた会社に、人は集まる

採用の現場では、できている会社とできていない会社の二極化が進んでいます。就業規則や採用条件、福利厚生を整え、採用ページもSNSも運用し、キャリアプランまで見える会社には、自然と人が集まる。むしろ「なんでうちに人が来ないの?」と不思議がるほどです。一方で、そこに力を入れていない会社にとっては、若い人が来ることが「夢の話」になってしまう。

困った末に人材紹介へ月15〜20万円を払っても、結果は出ない。採用コストだけが上がり、来てもミスマッチですぐ辞めてしまう。この悪循環を、同社は数多く見てきました。裏を返せば、情報を整えた会社にこそ人は流れる。やるべきことをやれば、採用は変えられるのです。

「仕事がない」の正体は、「取り方がわからない」

もうひとつの課題が集客です。東北の顧客の約8割が、この集客に悩んでいるといいます。「仕事がない」という言葉の裏にあるのは、多くの場合「仕事の取り方がわからない」という状態。やれることはまだあるのに、動くこと自体が億劫になっていたり、「取りに行く姿勢」が周囲からどう見られるかを気にして、一歩を踏み出せずにいたりする。狭い地域では知り合いも多く、その怖さは確かにあります。けれど逆に言えば、しがらみを気にせず動いている会社は、行動しているというだけで仕事を取れている——それが現場の実感だといいます。

実は、動けば取れる仕事がある

取材で特に興味深かったのが、仕事の「流れ込み」の話です。たとえば、長年の固定的な取引関係も、経営者の高齢化や廃業、担当者の世代交代によって見直される局面が増えている。品質やコストを改めて問い直す動きのなかで、新しい会社に門戸が開かれつつあるというのです。

さらに宮城県では、東京や関西に本社を置く会社が公共関係の仕事を受注し、地元の施工店を探して問い合わせてくるケースが実際にあるといいます。広島や九州の会社から「宮城の仕事を取ったので施工店を探しています」という連絡が来ることもある。この構造は、地元ではまだあまり知られていません。新規の取引先を求める地元の中小企業にとっては、確かなチャンスです。

取り組む企業が少ない今こそ、一歩抜きん出やすい

ここに、この取材でいちばん印象に残った視点があります。都心では、Webマーケティングを本格的に運用しなければ集客は難しい。ところが東北では、まだ取り組んでいる企業が少ないぶん、きちんと整えるだけでオウンドメディアから問い合わせが来るケースがあるというのです。

周囲がまだ動いていない今だからこそ、やるだけで一歩抜きん出られる。それが東北の伸びしろだと潮田さんは言います。誰もがやっている東京では埋もれてしまうことが、東北では大きな差になる。「まだ誰もやっていないからこそ、ファーストペンギンになれる」——この一言に、東北で挑む価値が凝縮されていました。

ツールだけでは、売らない ― 泥臭く、人が入る

DXやSaaSと聞くと、「導入のハードルが高そうだ」と身構える経営者は少なくありません。BRANUがそこをどう越えているのか。答えは明快でした。大事なのは“モノ”ではなく“結果”。商品の力だけで売るのではなく、サポートをつけ、成果が出るまで伴走する。「効果を出すまで、丸投げしてください」という姿勢です。

たとえば、顧客がサイトを更新したいときは、LINEで送ってもらえば同社側で対応する。さらに、協力会社探しも「CAREECON Platform」のマッチングを使うだけでなく、必要ならBRANUが間に入って探す。「ツールを月いくらで導入する」というより、「営業担当を月いくらで置く」感覚に近いといいます。人手が足りないから相談しているのに、ツールを渡して「どうぞ」では意味がない。ITが必要な業界だからこそ、あえて泥臭く人が入る。その伴走力が、同社の低い解約率にもつながっているのです。

今後の展望と、読者へのメッセージ

スカイブルーカラー ― AIで、現場の生産性を上げる

BRANUが描く先には、「スカイブルーカラー」という構想があります。現場の技術力にAIの生産性を掛け合わせ、現場で働く人がより高く稼げるようにし、その地位を上げていくという考え方です。東北に目を向ければ、老朽化した橋梁の補修需要が控え、岩手や北海道では半導体関連の動きも生まれている。大きな企業が動けば、周辺の住宅や整備の仕事もぐっと増える。まずは東北をしっかり固め、ゆくゆくは北海道にも営業所を出しながら、中小建設業の生産性を一から引き上げていき、「CAREECON Platform」を通じて経営課題を一気通貫で解決できる“社長の右腕”となる——それが今後の展開です。

東北の人の魅力 ―「冷静と情熱の間」

仙台に住んで1年、潮田さんが感じているのは人の温かさだといいます。ファーストコンタクトでは少し距離があるけれど、関係が近づくと内に秘めた熱さが見えてくる。腹を割って話せば、身内のように助けてくれるし、相談もしてくれる。つまり、関東のドライさとも関西のウェットさとも違う、「冷静と情熱の間」のような人の良さがあるのです。だからこそ、ここでは商材の力より人間力が試される。「費用対効果より、この人と仕事がしたい」で決まる世界です。同席したサブマネージャーの岩渕さんも、後継者がいて世代交代が進む、将来性のある会社が東北には多いと、現場での手応えを語ってくれました。

読者へのメッセージ「一歩踏み出せば、東北は伸びる」

そして最後に、東北で事業を営む読者へのメッセージを伺いました。「一歩踏み出す勇気さえあれば、東北はグッと伸びる地域」。まだ多くの会社が動いていない今だからこそ、ファーストペンギンになるメリットがある。ビジネスは、みんながうまくいっている領域ではなかなか勝てない。だからこそ、先に動けば可能性がある——北の現場を足で回る人たちの言葉は、東北で挑むすべての事業者への、静かなエールのように聞こえました。

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