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経済分析

仙台駅前の再開発はなぜ進まないのか?閉店ラッシュの裏にある構造問題を専門家3名が議論

仙台駅前 再開発

仙台駅前再開発が止まっています。しかし、旧さくら野百貨店は閉店から9年近く経っても更地のまま。さらに、隣のEDENも2024年1月に閉店しました。

仙台駅前の再開発はなぜ進まないのか?

建設費の高騰(2020年比で3割以上)だけが原因ではありません。仙台は全国1位の支店経済都市であり、消費単価が低く投資回収が見込めない構造が根本にあります。さらに地元不動産の東京資本への売却が加速し、家賃が上昇。地元店舗が維持できない悪循環に陥っています。

仙台駅前再開発の現状を専門家3名が議論

しかし、建設費の高騰だけで説明できるのでしょうか。実際には、仙台経済の構造的な問題が重なっています。

そこで今回、私(田口)がプロデューサーを務める「みちのくエコノミクス」で、3名の専門家を迎えて仙台駅前再開発を徹底議論しました。具体的には、MCは全国の商店街再生に取り組む木下斉氏です。データ解説は七十七R&C 首席エコノミストの田口庸友氏。そして現場の実態は広告・不動産マーケティングの高橋正人氏が語ります。

つまり、結論から言えば仙台駅前再開発が進まない本当の理由は「建設費」ではなく「稼ぐ力の弱さ」です。つまり、この問題は仙台で事業を営むすべての企業に関わるテーマなのです。

なお、仙台の支店経済の構造については「仙台は全国一の支店経済」で、インバウンドの課題については「東北インバウンドはなぜ消費単価が低いのか?」で詳しく解説しています。

本記事の著者とゲスト

田口陽大

田口 陽大 (たぐち ようた)

株式会社ミチノクキカク 代表取締役

東北大学経済学部卒。総フォロワー27万人・月間1,000万ViewのSNSメディアを運営。YouTube番組「みちのくエコノミクス」プロデューサー。村井嘉浩 宮城県知事・バイタルネット 一條社長・エムシス 瀧川社長・七十七R&C 田口庸友氏など東北の経済人と対談。

※本記事は番組での対談内容をもとに、田口陽大が編集・再構成したものです。

ゲスト紹介

田口庸友

田口 庸友 (たぐち やすとも)

七十七リサーチ&コンサルティング 首席エコノミスト(上席研究員)

秋田県出身、秋田高、東北大学法学部卒。七十七銀行グループのシンクタンクで東北経済の調査・分析を担当。仙台・東北の経済動向、地域金融、人口動態に精通。数多くのメディアに出演し、仙台・東北経済を第一線で発信している。

木下斉

木下 斉 (きのした ひとし)

まちづくり専門家 / MC

高校1年から全国の商店街再生に取り組む。社会人向けスクール「都市経営プロフェッショナル」を10年前に開校し、卒業生600名超。YouTube「木下斉チャンネル」でも全国の街づくりを発信。著書に「福岡市が地方最強の都市になった理由」など。

高橋正人

高橋 正人 (たかはし まさと)

広告制作会社代表 / 不動産マーケティング

仙台市内で広告の制作会社を経営。不動産系のマーケティングを多く手がけ、仙台の不動産市場と商業環境の現場に精通。

仙台駅前で何が起きているのか|閉店ラッシュの全体像

一等地が次々と空白に

まず事実を整理します。仙台駅前再開発エリアでは大型商業施設の閉店が相次いでいます。

■ 仙台駅前再開発エリアの主な閉店・空白物件

物件名 閉店時期 現状
旧さくら野百貨店 2017年 再開発断念・解体開始
EDEN 2024年1月 次の計画未定
フォーラス 長期休館中 耐震診断・再開未定
ヤマダ電機LABI 撤退 次の計画未定
読売仙台ビル(イオン仙台) 建替計画中 唯一計画が進行中

西口が沈み、東口が逆転しつつある

一方で、仙台駅東口は元気です。具体的には、2023年6月にヨドバシ仙台第1ビルがオープンし、スーパーのロピアも進出しました。

実際に、田口氏によれば仙台市の歩行者通行量調査でコロナ前を上回っているのは東口だけです。つまり、西口と東口の力関係が逆転しつつあります。10年前には考えられなかった構造変化が起きているのです。

仙台駅前再開発が止まる本当の理由|建設費だけではない

建設費は2020年から3割以上上昇

まず、建設費の問題があります。実際に、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下「PPIH」)が計画を立てた2020年から平均で3割以上上昇しています。さらに仙台の建築コストは全国的に見ても高い水準です。

しかし、田口氏は「建設費だけが理由ではない」と明言しました。

投資しても回収できない|消費単価の壁

つまり、本質的な問題は仙台の「稼ぐ力」の弱さです。具体的には、仙台市は商業・交通サービスが中心で、情報通信や金融のような高付加価値産業のウェイトが低い構造にあります。

さらに高橋氏は現場の実態を語りました。「仙台で言えば、坪250万円を超えた瞬間に一般市民は買えない。富裕層は大体500人くらいしかいない。その人たちが一生懸命買い回しているのが現状です。」

つまり、東京から見れば「坪1,700万円なら安い」と感じます。しかし、実際にやってみると客単価が低く回収できないのです。

■ 仙台駅前再開発が止まる3つの構造的原因

1
建設費の高騰
2020年比で3割以上。仙台は全国でも高い水準
2
消費単価が低い
家賃に転嫁しても入居者がつかない。客単価が東京の感覚と合わない
3
人口ポテンシャルの低下
東北の出生数は半減。仙台も人口減少局面に突入

仙台駅前再開発を阻む不動産の悪循環

コロナ後に地元オーナーが一斉に売却

実際に、高橋氏によれば仙台の中心部で不動産オーナーの入れ替わりが加速しています。

具体的には、仙台の街中のビルはちょうど築50〜60年の時期です。さらに、コロナで苦労した経験も重なりました。その結果、「子供たちに苦労させたくない」という考え方が強まっています。その結果、相続のタイミングで一斉に売却する動きが出ています。

一方で、しかし、それを買い取るのは東京の不動産会社です。つまり、地元の感覚では家賃8万円だった物件が、オーナーチェンジ後に16万円になるケースが相次いでいます。

国分町の半年サイクル問題

その結果、国分町あたりのメインストリートでは出店と撤退が半年ごとに繰り返される状況が生まれています。高橋氏は「地元の小さな不動産会社はみんな悲鳴を上げている」と語りました。

特に特に深刻なのは、この家賃上昇が仙台駅前再開発にも波及している点です。なぜなら、土地オーナーが高値での売却を期待するため、再開発の合意形成が進まないのです。

福岡との決定的な差|民間が旗を振るか、行政が旗を振るか

福岡は民間主導、仙台は官主導

木下氏は福岡との比較で仙台の課題を浮き彫りにしました。

福岡では西鉄や福岡地所が都市開発のプランを民間から提案します。実際に、80年代のソラリア計画は西鉄の提案で実現しました。つまり、路面電車の跡地をバスターミナルに転換し、九州各地から天神に高速バスを直結させた結果、福岡の商業は九州1位になったのです。

一方で、一方で、仙台は「お上が旗を振ってから民間がついていく」文化です。つまり、田口氏は「行政は旗を振るにはいいが、お金もアイデアもない」と指摘しました。

■ 福岡 vs 仙台の都市開発アプローチ

項目 福岡 仙台
開発の主導権 民間が提案→行政が乗る 行政が旗振り→民間がついていく
交通計画 バス会社が自ら提案 規制の議論中心
官民連携 建設的に一体で推進 一定の線から踏み込まない
人口の後背地 九州各県がまだ維持 東北の人口が急減
商業の強み 情報通信・スタートアップ 商業・公務が中心

地下鉄直結すら実現しない仙台の壁

高橋氏が挙げた象徴的なエピソードがあります。仙台の地下鉄駅の真上にマンションが建っているにもかかわらず、地下から直結できないというのです。1階で外に出て、ぐるっと回って駅の入り口に入る構造になっています。

札幌では地下歩行空間と周辺ビルの全面接続が進み、再開発事業の総額は福岡を上回っています。つまり、同じ地方都市でも官民連携の度合いで大きな差がついているのです。

仙台駅前再開発を動かす「ウィンブルドン現象」とは

外からのプレイヤーに頑張ってもらう

では、仙台はどうすればいいのでしょうか。具体的には、田口氏の提案は「ウィンブルドン現象を目指すしかない」というものでした。

具体的には、テニスのウィンブルドン大会ではかつて優勝者が外国人ばかりでした。しかし、外国人プレイヤーが活躍することで大会自体は世界最高峰の地位を維持しました。仙台も同じ発想です。つまり、外からのプレイヤーに活躍してもらい街を活性化させます。

仙台商人のメンタリティと「伊達経済」

さらに、高橋氏は「仙台商人」の特徴を率直に語りました。「100万人いるからそこだけ見ていれば食える」という意識が根強いのです。

一方で、しかし、仙台には「新しいもの好き」という面もあります。初出店には人が殺到するほどです。田口氏はこれを「伊達男の原型」と表現しました。つまり、新しいものに飛びつく気質が挑戦者を受け入れる土壌になり得ます。

半導体と外貨獲得という突破口

さらに、さらに、東北には製造業の追い風も吹き始めています。具体的には、台湾の半導体ファウンドリの進出は一度白紙になりました。しかし、村井知事が半導体誘致を最大の公約に掲げています。

実際に、田口氏は「何らかの形で進んでいると思われる」と語りました。実際に、東北は半導体のサプライチェーンが整っています。製造業との相性が良い地域です。その結果、高所得人材が流入して消費力が上がります。不動産投資の採算も改善するでしょう。

※せんだい都心再構築プロジェクトの詳細は仙台市公式ページで確認できます。また、さくら野跡地の経緯は都市商業研究所が詳しく報じています。

動画で詳しく見る

本記事は、トーホクテレビ「みちのくエコノミクス」の動画内容を再構成したものです。動画では3名の専門家による議論の全容が見られます。ここでは紹介しきれなかった音楽ホール問題や姫路駅前との比較なども語られています。

東北の経済を深く知りたい方は、ぜひトーホクテレビのチャンネル登録もお願いいたします。

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