「札仙広福」の中で、仙台と福岡の差が広がり続けています。しかし、なぜ同じ地方中核都市で、ここまで差がついたのでしょうか。
仙台と福岡の差はなぜ広がったのか?
最大の違いは「民間が旗を振るか、行政が旗を振るか」です。福岡は西鉄や福岡地所が都市開発を民間から提案し、行政が後押しする構造。仙台は逆に行政主導で民間がついていく文化です。さらに、福岡は九州各県という人口ダムがまだ機能している一方、仙台の後背地である東北は出生数が半減しています。
仙台と福岡を徹底比較|専門家が語る構造的な差
具体的には、仙台市は「福岡にライバル宣言」を出したことがあります。しかし、田口庸友氏は「正直、笑ってしまった」と振り返りました。
そこで今回、私(田口陽大)がプロデューサーを務める「みちのくエコノミクス」で、まちづくり専門家の木下斉氏、七十七R&C首席エコノミストの田口庸友氏、広告・不動産マーケティングの高橋正人氏の3名に、仙台と福岡の違いを議論してもらいました。
結論から言えば、差がついた原因は「民間力」と「人口構造」の2つです。つまり、逆転の鍵もこの2点にあります。
※本記事は番組での対談内容をもとに、田口陽大が編集・再構成したものです。
仙台と福岡の産業構造はここが違う
福岡は情報通信が強く、仙台は商業・公務が中心
まず産業構造の違いから見ていきます。田口庸友氏のデータによれば、仙台と福岡では「稼げる産業」の比率がまったく異なります。
具体的には、福岡は情報通信産業のウェイトが高い都市です。一方で、仙台は商業やおろし、公務・教育といった公的サービスが中心です。つまり、1人当たりの付加価値が高い産業が仙台には少ないのです。
■ 仙台と福岡の産業構造の違い
出典:内閣府「県民経済計算」をもとに番組で議論
| 項目 | 仙台 | 福岡 |
|---|---|---|
| 情報通信 | 弱い | 非常に強い |
| 製造業 | 弱い(周辺にも少ない) | 周辺に分散 |
| 商業・おろし | 強い | 強い |
| 公務・教育 | 比率が高い | 平均的 |
| 経済の特徴 | 支店経済・内需依存 | 業務中枢・外向き |
仙台と福岡で人口の「後背地」が決定的に違う
さらに大きいのが人口の後背地の差です。木下氏はこう説明しました。
九州は県が細かく分かれており、熊本・鹿児島・長崎・佐賀・大分・宮崎と多様な都市が存在します。つまり、人口のダムがまだ機能しているのです。北九州も元気を取り戻しています。
一方で、東北は少子化が日本最速で進んでいます。実際に、大学就職期の世代の出生数は東北6県で8万4,000人から3万7,000人へ半減しました。その結果、仙台のインプット側が急速に弱っています。
民間が旗を振るか、行政が旗を振るか
福岡の西鉄が変えた「天神」の歴史
仙台と福岡の最大の違いは都市開発のアプローチです。木下氏が具体例を挙げました。
具体的には、1980年代に西日本鉄道が「ソラリア計画」を提案しました。九州各地から天神に高速バスを直結させ、路面電車の跡地をバスターミナルに転換したのです。その結果、福岡の商業は九州1位になりました。
さらに、姫路では地元のバス会社・タクシー会社の社長が率先して駅前の歩行空間化を提案しました。つまり、民間の交通事業者が「街のために」動いた事例です。
仙台は「お上が旗を振る」文化
しかし、仙台はまったく逆です。田口庸友氏は「東は基本的にお上が旗を振ってから民間がついていく」と分析しました。
高橋氏はさらに踏み込みました。「仙台は歴史的に共産系の首長が続いた。つまり、発展させようという気がなかった。」これは驚くべき指摘ですが、50年以上にわたる都市戦略の不在を説明する一因になっています。
一方で、福岡の高島市長は「天神ビッグバン」を掲げ、民間の提案を行政がバックアップする構造を作りました。その結果、天神エリアだけで数十棟の建て替えが進行しています。
札幌から学ぶ「官民連携」の成功例
地下歩行空間+ビル全面接続の衝撃
木下氏は福岡だけでなく札幌の事例も紹介しました。
具体的には、札幌は駅からすすきのまでの地下歩行空間を整備しました。さらに、その歩行空間に面したビルを建て替える際、地下との全面接続を義務づけたのです。
つまり、地下なのに地上のように歩けて、ビルにそのまま入れる構造です。その結果、札幌の再開発事業の総額は実は福岡を上回っています。しかし、福岡ほどのアナウンス力がないため注目されていないだけなのです。
仙台は地下鉄直結すら実現できない
一方で、仙台には象徴的なエピソードがあります。高橋氏が語りました。
「仙台の地下鉄駅の真上にマンションが建っている。しかし、地下から直結できない。1階で外に出て、ぐるっと回って駅に入る構造です。」
つまり、直結させれば不動産価値が大きく上がるにもかかわらず、行政と民間の連携がそこまで踏み込めていないのです。これは仙台と福岡の差を象徴する事例だと言えます。
仙台の逆転戦略|「伊達経済」という発想
仙台商人の「100万人いれば食える」メンタリティ
では、仙台はなぜ変われないのでしょうか。高橋氏は「仙台商人」の本質を語りました。
「仙台100万人、腐っても100万人。黙っていても山形や秋田から人が来て買ってくれる。」つまり、恵まれた内需があるからこそ外に打って出る必要を感じないのです。
実際に、山形の事業者は生き残るために東京で販売しています。しかし、仙台商人にはその危機感がありません。なぜなら、地元だけでそこそこ食べていけるからです。
「ウィンブルドン現象」と「伊達経済」で突破する
田口庸友氏はこの状況を打破する方法として「ウィンブルドン現象」を提唱しました。具体的には、仙台という舞台で外からのプレイヤーに活躍してもらう発想です。地元だけで盛り上げようとするのではなく、「挑戦者求む」の姿勢で外部を歓迎するということです。
さらに、仙台には「新しいもの好き」という強みがあります。初出店には人が殺到するほどです。高橋氏はこれを「伊達男の原型」と表現しました。つまり、かっこいい新しいものに飛びつく気質こそが「伊達」の語源なのです。
木下氏もこれに同意しました。「福岡も実は10年以上住んでいる人は3割程度。7割は入れ替わっている循環型の街。仙台も支店経済で人が循環している点は同じ。そのオープネスを活かすべきだ。」
仙台と福岡の差を埋めるための3つの転換
■ 仙台の逆転に必要な3つの転換
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1
官主導→民間主導
行政がお膳立てするのではなく民間の提案に行政が乗る構造へ
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2
内需依存→外貨獲得
インバウンド・輸出・半導体誘致で「外から稼ぐ」力をつける
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3
地元限定→挑戦者歓迎
ウィンブルドン現象で外部プレイヤーを積極的に受け入れる
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なお、仙台駅前再開発の現状と課題については「仙台駅前再開発はなぜ止まったのか?」で詳しく解説しています。また、仙台の支店経済の構造やインバウンドの消費単価の壁も合わせて読むと理解が深まります。
※福岡市の天神ビッグバンの詳細は福岡市公式ページで確認できます。また、せんだい都心再構築プロジェクトの情報は仙台市公式ページで公開されています。
動画で詳しく見る
本記事は、トーホクテレビ「みちのくエコノミクス」の動画内容を再構成したものです。動画では3名の専門家による白熱した議論の全容が見られます。
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