仙台市の人口が3年連続で減少しました。さらに、宮城県の倒産件数はリーマンショック以来の高水準です。2026年の東北経済はどうなるのでしょうか。
2026年の東北経済はどうなるのか?
七十七R&C首席エコノミストの田口庸友氏は、2026年のキーワードを「国際化に向けた助走の1年」と位置づけました。人口減少とインフレが同時に進む東北では、国内市場だけでは立ち行かなくなっています。外貨獲得・インバウンド・半導体誘致・適切なプライシングの4つが突破口です。
東北経済2026年の展望|首席エコノミストが語る
しかし、ネガティブな数字の裏には打ち手も見えています。そこで今回、私(田口陽大)がプロデューサーを務める「みちのくエコノミクス」で、七十七R&C首席エコノミストの田口庸友氏に2026年の展望を伺いました。
結論から言えば、田口氏のキーワードは「国際化に向けた助走の1年」です。つまり、外に目を向けた企業とそうでない企業の差が決定的に広がる年になるという見立てです。
本記事の著者
※本記事は番組での対談内容をもとに、田口陽大が編集・再構成したものです。
ゲスト紹介
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田口 庸友 (たぐち やすとも) 七十七リサーチ&コンサルティング 首席エコノミスト(上席研究員) 秋田県出身、秋田高、東北大学法学部卒。七十七銀行グループのシンクタンクで東北経済の調査・分析を担当。仙台・東北の経済動向、地域金融、人口動態に精通。数多くのメディアに出演し、仙台・東北経済を第一線で発信している。 |
仙台の人口減少が止まらない|「壊れたダム」の構造
3年連続マイナス、市の想定を大幅に下回る
まず2025年の注目ニュースから振り返ります。仙台市の人口が3年連続で減少しました。具体的には、2025年は944人の減少です。
しかし、仙台市自身の想定では2028年まで緩やかに増加するはずでした。つまり、市の予測を大幅に下回る結果になっています。
水源が枯れ始めた「放流型ダム」
田口氏は仙台の人口構造を「放流型ダム」にたとえました。具体的には、東北6県から人口を集めて首都圏に吐き出す構造です。
ところが、そのダムの水源である東北の出生数が急減しています。実際に、東北6県の大学就職世代の出生数は8万4,000人から3万7,000人へ半減しました。さらに、コロナ後は首都圏への流出も拡大しています。
つまり、入ってくる水が減り、出ていく水が増えるという二重苦です。加えて、高齢者の死亡による自然減もベースとして大きくなっています。
倒産件数がリーマン以来の高水準|その本当の原因
166件はコロナの「先送り」とインフレの合わせ技
もう1つの衝撃的なニュースがあります。宮城県の倒産件数が166件に達し、リーマンショックの2008年に次ぐ高水準になりました。
しかし、田口氏は「倒産が多い=景気が悪い」ではないと指摘しました。なぜなら、コロナ禍では政府の支援策で倒産が人為的に抑えられていたからです。つまり、今起きているのは「先送りされた倒産」と「インフレによる新たな倒産」の合わせ技です。
需要不足ではなく「供給不足」という新しい苦しみ
さらに興味深いのは、景気の質が変わっているという点です。田口氏はこう説明しました。
「昔の不景気は需要がなくなること。つまり、注文がない、仕事がない。ところが今は需要はそこまで落ちていない。供給側が足りなくなっている。」
具体的には、外国人観光客が来ても旅館の人手が足りず満室にできない。人を雇いたくても賃金が高すぎて雇えない。つまり、仕事はあるのに回せないという新しい苦しみが生まれています。
2026年のキーワード|「国際化に向けた助走の1年」
国内市場だけではもう立ち行かない
田口氏が掲げた2026年のキーワードは「国際化に向けた助走の1年」です。
具体的には、人口が減ればマーケットも縮小し、担い手もいなくなります。つまり、国内市場だけではやっていけないし、日本人だけでもやっていけない。その最先端にいるのが東北です。
そのため、外貨を取り込み、外国人労働者とうまく付き合いながら、持続可能な体制を作る年にする必要があります。
■ 2026年 東北経済の4つの突破口
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1
半導体誘致
サプライチェーンが整う東北はラストピース待ち
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2
インバウンド深化
「パスルー」から「滞在型」への転換
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3
適切なプライシング
海外のWilling to Payに合わせた価格設定
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4
自治体を超えた連携
東北を1つの経済圏として海外に打って出る
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半導体が東北を変える|「ラストピース」を待つ産業集積
PSMCの撤退で逆に準備ができた
注目産業として田口氏が最初に挙げたのが半導体です。実際に、2024年に台湾の大手PSMCが進出を断念したことは大きなインパクトがありました。
しかし、田口氏は「流れは脈々と続いている」と語ります。なぜなら、東北には半導体の製造装置・素材・メモリーのサプライチェーンがすでに整っているからです。つまり、工場という「ラストピース」が来れば、東北の半導体産業集積が完成するのです。
さらに、村井宮城県知事が半導体関連産業の誘致を最大の公約として掲げています。田口氏は「水面下で動いている」と述べました。PSMC撤退のおかげで受け入れ体制を整える時間ができたという見方もできます。
インバウンドの「パスルー問題」|仙台は通過点なのか
台湾からの観光客は本当に仙台が目的か
インバウンドについて、田口氏は「もう少し詳しく見ていく必要がある」と指摘しました。
具体的には、宮城県のインバウンドの半分近くが台湾からの観光客です。しかし問題は、彼らが本当に仙台を目的に来ているのかという点です。
田口氏はこう問いかけました。「仙台空港に着いて、市内のホテルに泊まって、ドラッグストアで買い物して、次の日の朝にはもう次のところに行ってしまう。つまり、単なるパスルーのポイントでしかないのではないか。」
松島は年間300万人でも「稼げていない」
松島もまた課題を抱えています。年間300万人が訪れるものの、宿泊率が低いのです。つまり、日中来て、泊まるのは仙台か他の場所。立ち寄るだけで終わってしまいます。
一方で、秋保温泉は民間のキーマンが引っ張る形でカフェ・雑貨屋・ワイナリー・ブルワリーが増え、長時間滞在できる観光地に変わりました。田口氏はこれを「行政が旗を振ったのではなく、民間が引っ張った成功例」と評価しています。
なお、東北のインバウンド消費単価の課題については「東北インバウンドはなぜ消費単価が低いのか?」で詳しく解説しています。
円安を「使い倒す」|適切なプライシングの時代へ
東北にとって円安はダメージだが、裏返せばチャンス
田口氏はインフレと円安の影響を解説しました。具体的には、愛知や沖縄のように輸出やインバウンドに強い地域にとって円安は追い風です。しかし、東北は輸入コストだけが上がる構造になっています。
つまり、円安を「使う側」に回らなければ格差は広がる一方です。田口氏は「東北もこの円安を使い倒していく必要がある」と強調しました。
「安くていいもの」は人件費を削るだけ
さらに、日本の商習慣にも問題があります。「安くていいもの」という発想は、結局どこかが割を食います。具体的には、人件費を削り、自分の身を削ることになるのです。
一方で、海外の消費者のWilling to Pay(支払い意思)は高い水準にあります。田口氏は「日本の商品はクオリティの割にものすごく安い。適切な価格で売って、それをちゃんと労働分配する。これが当たり前の姿だ」と述べました。
「来たれ若者」|世代交代が東北を変える
海外展開する企業とそうでない企業の差が広がる
所得は上がるのか。この問いに対して、田口氏は率直に答えました。
「海外に展開して所得を増やそうとする層と、これまでのやり方を延長している層との差が広がってくる。」つまり、全体としての底上げには外貨を取り込む企業が増えるしかないのです。
若い経営者は「横の連携」で動き始めている
しかし、明るい動きもあります。田口氏は若い経営者の台頭に期待を寄せました。
具体的には、既存の経営者は「これまでやってきたことの中に海外はなかった」ため、新しいことへの不安が大きいのです。ところが若い経営者は比較的早い段階からシビアに将来を見据え、横の連携も重視しています。
田口氏は最後にこう締めくくりました。「来たれ若者。実際の年齢ではなく、マインドとしての若さが広がっていけば、東北の国際化は進む。出遅れ感はあるが、遅すぎることはない。」
※東北の人口動態は総務省統計局のサイトで確認できます。また、仙台市の人口推計は仙台市公式ページで公開されています。
動画で詳しく見る
本記事は、トーホクテレビ「みちのくエコノミクス」の動画内容を再構成したものです。動画では音楽ホール問題や震災15年の復興状況なども詳しく語られています。
東北の経済を深く知りたい方は、ぜひトーホクテレビのチャンネル登録もお願いいたします。
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